オレンジジュースを飲む頃
私と3年間クラスメイトになるのか。
中々のイケメンの類だと思う。
クールで無表情のミステリアス、みたいな印象。
「名前、何て言うの?」
「な、名前?」
「そう、名前。俺は新村(にいむら)光瑠」
「あ、私は西浦(にしうら)唯穂です……」
「じゃあ、よろしく。ゆい」
そう言って、彼は桜の木の下から去って行った。
そ、それよりも……。
「今、〝ゆい〟って言われた?ゆい、だよ。ゆい」
インパクトが強過ぎて、瞬きを忘れていた。
チャラ男なのか、ミステリアス男なのか、どっちなんだ、彼は。
仲の良い友達ですら〝唯穂〟とか〝ゆいちゃん〟と呼ばれているから、不思議な感覚だった。
初めてだったから。
唯一〝ゆい〟と呼ぶのは、今でも彼だけだ。