ワインとチーズとバレエと教授
正直、誠一郎も動揺していた。
理緒のショックはそうとうなものだろう。
今は誠一郎の助言で、いったんバレエや仕事を、全てを止めているが、いずれ、復帰を目指す予定だったはずだ。
誠一郎も、その予定だった。
今、彼女から全てを奪ったら、どうなってしまうだろうー
誠一郎は、理緒の精神状態を心配した。
しばらくすると、理緒が、精神科外来の受付が
完了したとパソコンに表示されたので、
待合室にいるはずの理緒を呼びに行った。
「津川さん」
呼んだが、いつもの待合室のイスに
理緒が見当たらない。
「津川さん」
もう一度呼ぶが、理緒はいない。
誠一郎は、診察室に戻ると、
受付に内線で電話をした。
「津川さんがいないのですが」
受付女性が「え?先ほどまでいたのですが…
探しましょうか?」
「はい、お願いします」
誠一郎は内線を切った。
多分、近くにいるだろう。
5分後、受付から内線で、理緒がトイレで泣いていてあと10分で泣き止むから、ちょっと待ってて、と
言っているとの事だった。
誠一郎は、了解した。
とりあえず病院にいてくれて良かった。
それから15分が経過したが、理緒がまだ待合室に
戻っていなかった。
誠一郎はもう一度、受付に内線を入れた