ワインとチーズとバレエと教授


翌日、理緒は、セントラルバレエスタジオへ2ヶ月ぶりにやってきた。

「おはようございます」

とガラス張りのドアを開けると、緑川先生がこちらを向いた。

「あら、津川さん、お加減はいかがですか?」

理緒が軽く会釈をして

「はい、もうすっかり」

と答えたが、緑川先生が、訝しげに理緒を見た。

「…本当に大丈夫ですか?
顔色がそんなに…」

そんなに顔色が悪い?
自分はたった2ヶ月でずいぶん、悪くなったのだろうか?

鏡を見てもいつも見ている自分の顔だ。

「…本当に大丈夫ですか?
あまり無理しないでくださいね」

理緒は無言で頷いた。

そしていつも通り、いやそれ以上に
狂ったように理緒はバレエを踊り続けた。


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