ワインとチーズとバレエと教授


「帰りはタクシーですか?」

「いえ、電車で帰ります」

「……歩けますか?」

「それくらいなら大丈夫です」

「………いえ、タクシーにしておきましょう」

そう言うと、ホテルのロビーのタクシー乗り場まで理緒を連れていき、5000円札を運転手に手渡した。

「気をつけて帰ってくださいね、
また、お会いしましょう」

と、誠一郎は強引に理緒を、タクシーに押し込んだ。

「こんなに…お釣りが」

「それより、倒れないようにしてくださいね」

タクシーのドアが閉まり、理緒が誠一郎に頭を下げた。誠一郎は、手をヒラヒラさせた。初めてのデートだった。


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