ワインとチーズとバレエと教授
今日の理緒は一段と美しかった。
髪の毛をアップにした理緒を初めて見た。
バレエをしているときは、いつもああなのだろうか?
そしてシルバーのAラインのドレスワンピースが非常に良く似合っていた。
歩き方も、食べる所作も、言葉遣いも、美しかった。
姿勢が良く、バレリーナらしく、
本当に上品な、どこかのお嬢様に見えた。
意外だったのは、イヤリングやピアス、時計などの
装飾品を一切、身につけていなかった事だ。
何も持ってないということは、ありえないだろう。
金属アレルギーなのかもしれない。
ただ髪飾りの花は、ひときわ理緒を目立たせた。
ただただ美しい理緒を鑑賞していたかったが、そのままで済まなくなる前に、タクシーに理緒を押し込んだ。
実は待ち合わせの20分前に、誠一郎が来たのは、
自分もソワソワして、待ちきれなかったからだ。
理緒はきっと、ワインの銘柄も、知っていたのだろうが、あえて自分で決めずソムリエに選ばせたのだろう。
そんな控えめな理緒の性格も好きだった。
「先生は、私の何が…?」
と聞かれた時、本当に返答に困った。
美しいから?
でもそれだけじゃない。
理緒と自分は、何かが通じるものがある。
でも、それが一体、何なのか、
誠一郎は、まだ分からなかった。
ただ理緒が自分と、食事をしてるだけで
でとてもドキドキしていた。
そして、さらに誠一郎までドキドキした。
でも、悟られたくなくて、淡々とした態度を取った。