ワインとチーズとバレエと教授
誠一郎は、大学時代、モテた方だった。
医学部時代は、テニス部に在籍し、勉強だけでなくスポーツにも打ち込んだ。
医学部の男子には、女性は寄ってくる。
誠一郎も、そこそこ、好意を持たれた経験がある。
でも、付き合ったり、のめり込んだり、心から誰かを愛したことはなかった。
そんな誠一郎が、こんなにデートが緊張するなんて
45歳になるまで知らなかった。
なぜ理緒にだけ、こんなに特別な感情を抱くのだろう。自分でも不思議だった。
帰宅した後、LINE見ると、理緒から
「本日はご馳走様でした。
タクシーのお釣りは、次回お会いした時お返しします、素敵な時間をありがとうございました」
と丁寧な LINE が届いていた。
絵文字も何もない丁寧なお礼ー
誠一郎は
「こちらこそ、ありがとう
ゆっくり休んでください」
と簡素なLINEを送った。
誠一郎は思った。
理緒への思いが、どんどん膨らみ続け、いつか彼女を壊してしまわないか、心配だった。
だから、これからも、慎重に関係を続けていきたいー
誠一郎は幸せと、まだ消えない緊張感を感じていた。