ワインとチーズとバレエと教授


理緒が、はぁはぁ、息切れを始めた。

「ベンチにでも、座りましょう、あと10分程度で、出口です、歩けそうですか?」

「……はい、ちょっと疲れただけです!」

理緒は、やってしまったと思った。

駐車場までの道のりが途方もなく、遠く感じるほど
理緒は、疲労していることに、今さら気がついた。

「だから言ったでしょ?ライオンは見ない方がいいと」

誠一郎は、予想通りと言わんばかりに言った。

「……大丈夫です」

「歩けないならおんぶでも、しましょうか?」

誠一郎はクスクス言った。

「そんな恥ずかしいこと出来ません!歩けます!」

そう強がったが、駐車場についた理緒は、泣きたくなるほど安堵した。戻れないかと思ったのだ。

「先生、本当に、すみません…」

理緒が車の中で謝った。

「想定内です、あなたは、はしゃぎすぎですよ」

「…はい」

しばらく車を走らせ、街の中心に近づいたとき、
誠一郎は、おもむろに話しかけた。

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