ワインとチーズとバレエと教授

一緒にいたい。

でも、もう、歩けないし、食欲もない。
このまま居ても、誠一郎に迷惑がかかるだけー

理緒は、せっかくの、午後からのデートを、諦めるしかないと思った。

「おや、ずいぶん悲しそうな顔ですね。
そんなに私と一緒に居たいのですか?」

誠一郎は、からかうように言った。

「はい、できれば可能な限りご一緒したいです…
でも、私はもう歩けませんし、レストランで倒れてもいけませんので…」

理緒は悲しそうに言った。
自分が動物園ではしゃいだせいだ。

「では、こないだフレンチを食べた
ホテルを一泊取りましょう。
そこでなら、あなたは寝ていられますし、
ルームサービスでも頼めば外に出なくていいでしょう?」

「………」

理緒にとっては、これほど、嬉しい提案はなかった。どうしても少し横になりたかった。でも、誠一郎とも離れたくなかった。でも、ホテルとも言い出せなかった。

「……本当に、いいのですか?」

「えぇ、私も忙しくなる前に、あなたと一緒にゆっくり過ごしたかったですので。とりあえず、あなたは横になれて、私がとなりにいたら、よいのでしょ?」

「実は……ワガママですが…」

「とんでもない、それも素敵なデートですよ。
今、ホテルを予約します、朝食はつけましょう」

誠一郎は車を止めて、ネットで部屋を予約した。

相変わらず、察しが良く、誠一郎はテキパキしていた。理緒は誠一郎の心遣いが嬉しかった。

やっとの思いでホテルにチェックインし、
ようやく部屋についた。

ずいぶんと広い…

「少しグレードの高い部屋を取りました」

「ありがとうございます…」

そういうと、理緒がソファに座り込んだ。

「疲れたでしょ?足は痛くありませんか?」

実は痛かった。

「このまま、パタッと寝てしまう前に、シャワーやお風呂に入って身体を温めてから寝たほうがいいですよ」

実は理緒もそう思った。
このままベッドで横になったら、そのまま寝てしまいそうだ。動物にも触ったから、衛生的にもシャワーを浴びたい。

「……はい、そうさせてもらいます」

そうバスルームに向かうと、
なんだか、理緒が照れた。

「あの、先に入っても…?」

「どうぞ、何もしませんので、安心してください」

理緒が顔が赤くなった。

「なんです?私に何かして欲しいことでも?」

誠一郎はクスクス笑いながら、からかった。

「そっ…そんなんじゃありません!」

そういうと、恥ずかしげに、理緒がバスルームに向かった。

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