ワインとチーズとバレエと教授
そして食事が済んで、誠一郎はすぐに身支度を整えた。そして、着替とメイクが終わった、理緒を車に乗せて水族館へ向かった。
大人用のチケットを2枚買い、最初は深海の海の動物たちやクラゲなどを見たあとは、子供水族館という場所があり、そこではカメやヒトデに触ることができるらしい。
理緒は、さっそく、そちらに向かって歩き、ヒトデを触ったり、撫でたりしていた。
やっぱり理緒は、動物が好きなのだろう。
「ヒトデって、ひっくり返したら元に戻るのかしら?」
と、突拍子もないことを言い出す。
「おそらく筋肉運動で元に戻るでしょうけど…」
理緒がヒトデをひっくり返した。
すると10分かけてゆっくりヒトデは、元の向きに戻った。
「すごい!やっぱりひっくり返してもヒトデは
元に戻るのね!」
「でも、ひっくり返したら可哀想ですよ」
「そうですね…」
理緒は申し訳なさそうに笑った。
次は時間が合ったので、運良くイルカショーを見た。理緒は、はしゃぎっぱなしだ。
誠一郎は、そんな理緒を見て微笑んでいる自分に気づく。
でも、水族館に来て、もう1時間は過ぎていた。
このショーが終わったら、理緒と帰らなければ…
そう誠一郎は思った。
イルカは飼育員さんの投げた輪の中を通り越してみたり、ジャンプしたり、くるくる回転したり、観客を楽しませた。
理緒も目を輝かせていた。次はアシカのショーがある。理緒が、そちらにも行こうとしたが、誠一郎が止めた。
「今日はここで終わりにしましょう」
「でもこの20分後にアシカのショーが…」
「それはまた次回に取っておきましょう」
理緒は残念そうな顔だったが、先日、誠一郎のマンションで倒れ動物園でも懲りたらしく
「…そうですね、また今度
連れてきてください」
と、静かに微笑んだ。
本当は 誠一郎も、もっと 水族館を満喫させてあげたかった。
アシカのショーでも何でもいいから、理緒の目が輝けばそれで良かった。
今はそれを叶えてあげれないことがもどかしい。
だが、リカバリーがうまくいったら
いつか 水族館でも動物園でも、
理緒の好きなところは、どこだって行けるだろうと
思うことにした。
そして時刻は昼過ぎだったので、誠一郎は、遅いランチをしてから帰宅することを提案した。
誠一郎が飲み会で使ったことのある、大衆的なイタリアンの店で昼食をすることを理緒に提案し、理緒も喜んだ。
そこのイタリアンは学生にも人気だった。
さっそくお店に向かい、二人はランチセットを注文した。
理緒が選択したのはほうれん草とアサリのペペロンチーノ。それに、サラダとスープもついてくる。
誠一郎は、トマトとベーコンのパスタを注文した。
二人で頂きますをして理緒がパスタを頬張った。
「とても美味しいわ!」
理緒は満足そうだ。
「それはよかったです、ここは学生にも人気のお店で、カジュアルですが味は保証はできますよ」
誠一郎も微笑んだ。
多分、理緒が半分パスタを残し
誠一郎に渡してくると思ったがやはり、そうなった。
「……誠一郎さん…あの」
「分かってます、よく食べましたね」
誠一郎は自分の皿と、理緒の皿を交換し
理緒の残ったパスタを完食した。
1.5人分程度なら食べれるが、けっこうお腹がいっぱいだ。
理緒が申し訳なさそうな顔をしたが誠一郎は
「これから、もっと食べれるようになりますよ」
と、気遣った。