ワインとチーズとバレエと教授
嘔吐物には、途中から血が混じっていたが、喉が切れたのだろう…一体、自分はどうしたのだろうか?

"腕を振り払って"

なぜか、そのフレーズだけが耳に残る…誠一郎は少し混乱した。そして、冷や汗が出て、胸が苦しくなり、手で胸を押し当てた。

「…先生、藤崎先生…」

誠一郎はハッとした。外来に出てる医局員の野々村医師が、心配そうに誠一郎の顔を覗き込んでる。

「先生、いかがなさいました…?」

トイレの前でフラついている誠一郎を心配し、他の医局員もやってきた。

「いや…ちょっと…気分が悪くて…」

「先生、大丈夫ですか?」

「顔色が悪いですよ…?」

「先生、何かありましたか?」

他の医局員が心配するので、「いや、ただちょっと胃の調子が悪くて…大丈夫です、皆さん、外来に戻ってください、私は…大丈夫です…」と言ったところで、誠一郎は廊下にバタッと倒れた。

「先生!!」

他の医師も集まり、患者も騒ぎ始めた。誠一郎はすぐにストレッチャーに乗せられ血圧計を巻かれた。

「先生、お名前、言えますか!?」

と、看護師が叫んだ。そしてすぐに内科外来処置室に運ばれた。その時の記憶はとても曖昧だ。みんなが

"藤崎先生しっかりしてください!"

"先生、聞こえますか!?"

と言っている声が聞こえた。

ただ、うっすらと頭をよぎったのは、前に見た夢の記憶…

"ほら、誠一郎、これをやる、他の子にやったらダメだぞ、お前は優しい子だから…母さんには内緒だ"

「…父さん…」

誠一郎はうわ言を呟いたー
そして、意識は完全に闇に落ちたー

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