ワインとチーズとバレエと教授

そして再び内科外来の山本医師のところに戻ると

「血液検査は問題ないですね…」

「だから大丈夫ですと言ったでしょ?早く外来に戻らせてください」

「そうは言っても先生さっき、倒れたばかりなのですよ?そんな状態じゃ、津川さんが心配されますよ」

「彼女には何も言わないでください!」

誠一郎は怒鳴りながら、いつの間にか脱がされた白衣に腕を通す。

「私は先生が心配なのです」

「大丈夫です。大学病院で1年に2回目も人間ドックをさせられてますからね!」

「もちろん承知してます、わざわざスキルスだと脅すつもりはないのですが、一応、胃カメラの予約を…」

「けっこうです!外来があるので、もう行きます!」

誠一郎は、山本医師の言葉を振り切って、外来に戻って行った。山本医師は「…この性格はお父さん似ですなぁ…」と、ため息をついた。

精神科外来にいた看護師たちは「先生、大丈夫ですか?」と声をかけてきたが、誠一郎は大事にしたくなかった。「大丈夫です、他の先生に振り分けた患者を私のところへ戻してください」
そう誠一郎が言うと看護師は、渋々「承知しました」 と頭を下げ去って行った。

誠一郎は、 自身自分に何が起こっているのかよくわからなかった。ただ今は、何も考えたくなかったー

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