ワインとチーズとバレエと教授
急いで大学病院の職員用の駐車場に行き、自宅マンションへ急いだ。

マンションの窓から明かりが見える。
玄関をガチャッと開けると

「誠一郎さん、お帰りなさい」

と理緒の眩しい笑顔が見えた。

誠一郎は

「ただいま」

と言って理緒を抱きしめた。

そして理緒の唇にそっとキスをした。

「毎日、あなたがこうして居てくれると、私は幸せなのですがね」

「私もです…」理緒も微笑んだ。

部屋に入ると、もう夕食ができていた。

「前ほど手を込んだものではありませんが…」
と言っても、十分な夕食だった。

「今日はアジの開きに、とん汁と、五目ご飯と、肉じゃがと、カブのひき肉煮に、ほうれん草のおひたしと、お漬物と、りんごを用意しました」

「すごいじゃないか…」

「…ありがとうございます」

理緒は少し照れていた。

「早く食べたいので、着替えてきますね」

誠一郎はスーツから、ラフなシャツに着替えた。

そしてリビングの食卓テーブルに行き、2人で「いただきます」をして理緒の手作りの夕飯を堪能しようと思った。

五目ご飯のいい香りに、とん汁は具だくさんで、少し生姜の香りがする。身体に良さそうだ…

アジの開きは、いい具合に焼けていて、肉じゃがも美味しそうだ。おひたしは、ちょうど食べたかったところだ。

誠一郎はどこから手をつけていいかわからず迷っていた。

それを見た理緒はクスと笑った。

「誠一郎さん、お好きなものからどうぞ」

「あ、はい…」

と言って、とん汁に手を伸ばそうとすると、理緒が

「…誠一郎さん、また左手から血が出てます…」

「え…?」

「誠一郎さんは、左手をよく引っ掻きますね…
今、レスタミンを持ってきます。書斎にありましたよね?」

いつのまにか、左手の甲から血が滲んでいた。

誠一郎はよく左手の甲をなぜか引っ掻てしまう。

理緒はどこにレスタミンがあるのか分かるだろうか?

と思ったが、すぐに包帯とレスタミンを持ってきた。

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