ワインとチーズとバレエと教授
レスタミンは皮膚科でよく出す軟膏で、主にかゆみ止めに使われるが、ステロイドほどの強さはない。

「もう掻かないよう、包帯を巻いておきましょう…」

「いいですよ、そんな大げさにしなくても…」

「でも心配です…」

理緒はティッシュで、にじんでいる血を拭き取りレスタミンを塗り 包帯を巻いた。

「すみませんね…あなたに、こんなことをやらせて… 」

「いえ…」

理緒は心配そうな顔をした。

「皮膚科で見てもらったらどうですか?」

「大したことじゃないですよ、なんとなく引っ掻いてしまって…」

そういえば、いつからだろう…こんなに引っ掻くようになったのは…まぁ、いいや。

そして誠一郎は今度こそ食事を頂くことにした。まずは、とん汁から一口飲んでみると、

「すごく美味しいです…」

理緒の目が輝いた。野菜がたっぷり入って、その甘いだし汁がとても美味しい。

「生姜を入れてくれたんですね」

「香り付けと身体を温めるためです」

そして 次に、五目ご飯を口の中に入れると誠一郎の顔がゆがんだ。

「誠一郎さん…?」

「…ちょっとすいません…」

誠一郎は自分で書斎にある胃薬を持ってきて飲んだ。

「大丈夫ですか…?」

「すみませんね、今日、病院でも胃が痛くなり、ちょっと…」

倒れたことは言わないでおいた。

「そうだったのですか…無理してお食事を食べさせてしまったようで、すみません…」

「いや、そうじゃなくて、さっきまで本当に治っていたんですよ…今日は調子が悪いのかな…」

「今日はもう、お休みになった方がいいと思います、誠一郎さん、顔色が悪いですよ…」

「そうかな…」

鏡で見ると、いくらか青白い。
胃薬を飲んだついでにシャワーを浴びてそのまま眠ることにした。

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