ワインとチーズとバレエと教授
翌朝目が覚めると、身体がとても重だるかった。

熱を測ったが、微熱がある程度で大したことはなさそうだ。理緒が心配そうに誠一郎を見ている。

「もう、大丈夫ですから」

「今日、病院をお休みされてみては?」

「いや、そういうわけにはいかないんだ、今日は講義があるし、学会の理事に頼まれた書類も書かなければならないし、雑用が多いんだ」

誠一郎は、笑いながら言った。
手は包帯で巻かれたままたった。

「昨日の夕飯が残ったままですが、食べれそうにない、すみません…」

「分かってます、代わりにフルーツジュースを作りました」

見ると、理緒はジューサーでりんごと、みかんと、バナナとはちみつと、きな粉と豆乳を入れたジュースを渡してきた。

「私がバレエのとき、よく飲んでたものです。栄誉満点ですよ」

「ありがとうございます、これなら飲めそうです」

誠一郎は胃薬と一緒にジュースを一口飲んでみると、とても美味しかった。

「あなたは何でも上手ですね」

誠一郎は微笑んだ。そしてもう一口ジュースを飲もうとしたとき

「……っ…」

誠一郎は胸を押さえた。

フルーツジュースを入れたガラスコップがガシャンと音を立てて割れ床に散らばった。

誠一郎は嘔吐した。

「誠一郎さん!」

「…大丈夫」

「大丈夫じゃありません!」

その後、再び、ゴボッという音と共に、誠一郎が大量に吐血した。

「誠一郎さん…!!」

理緒の顔がどんどん青ざめていく。誠一郎の顔はもっと青白い。

「大丈夫です… 大丈夫…あとで内科に…」

「そんなこと言ってる場合じゃありません!救急車を…!」

「…いえ…大丈夫…」

そういうと、パタッと血まみれになった誠一郎は床に倒れ込んだ。

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