ワインとチーズとバレエと教授
そう呟いて、誠一郎は目が覚めた。

四角い白い天井が見える。周りを見渡すと病室の個室に入っていた。モニターをつけられ、点滴に繋がれている。

何だろう…?
動こうとすると身体がきしむように痛い…
とにかくナースコールを… いや、ちょっと待てよ…うちの病院か?
今は何時だ?講義に行かないと…というか、何で俺はここにいるんだ…?

ととりあえず誠一郎は、点滴をぶら下げながら廊下に出ると、内科の看護師が

「藤崎先生!」

と大声をあげて、こちらに寄ってきた。

「ダメじゃないですか!起きたら!」

「何なんですか、急に…」

「朝、吐血したのですよ!覚えてないんですか?」

そうだ…吐血して…理緒がそばにいたはず…なんてことだ…!

「理緒!理緒!」

「先生、落ち着いてください!」

その声を聞いて、廊下で心配そうにしていた理緒が
駆け寄ってきた。

「誠一郎さん…!」

「理緒…」

理緒の瞳に涙の跡がある。

「大丈夫です、心配しないでください」

「"心配しないでください"というセリフは、病名を聞いた後でしょ?」

山本医師は「はぁ…」と、ため息をついた。

「あ、先生…」

「"あ、先生"じゃありませんよ。だから昨日、検査しましょうと言ったじゃありませんか」

誠一郎はうつむいた。
< 258 / 302 >

この作品をシェア

pagetop