ワインとチーズとバレエと教授

【交差する三人】誠一郎の傷跡

「父は若年性アルツハイマーだったんだ…父が退官前の5年前、60歳のとき、外来で患者に暴言を吐き
診察室で暴れたんだ…

周囲の医師は父親の異変に気がついていたが、当時は誰も何も言えなかったのだとろうと思う…

私は、トロント大学の留学を終え帰国した37歳のときから、父の異変が始まっていたと思う…

普通、大学病院で養老病棟に入れるべき患者を受け入れたりはしないが…

ただ、父は、名誉教授として何とか退官し、私はそのあと引き継ぐ形で教授になり、大学病院の配慮で
ここに入院してます…」

「そうでしたか…」

二人に長い沈黙が流れた。
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