ワインとチーズとバレエと教授
次の日の朝、朝食を作りながら

「最終講義は、一般公開されるのですか?」
と理緒が聞いてきた。

「一般公開されますし、一応、地元のテレビ局も何社か来る予定です」

「私も行っていいのかしら?」

「あなたが?」

誠一郎は驚いた。

「私が聞いても誠一郎さんの講義は分からないでしょうが…講義をしている誠一郎さんを見たくて…」

「そうでしたか、分からないといことはないですが、そうですね…あなたが疲れないのであれば
私の最終講義にどうぞ」

理緒は微笑んだ。

理緒は誠一郎が教壇に立ってしゃべるところを見たことがない。

写真で何枚か見たが、いつも凛として、隙がなく
やや目が鋭い感じがした。

「講義をしてる誠一郎さんは、きっと素敵だろうと思います」

「そう思うのは、あなたぐらいですよ」

誠一郎は理緒の髪を撫でた。

「じゃあ、お邪魔じゃなければ最終講義、伺います」

「どうぞ」
誠一郎は理緒の額にキスをして、大学病院に出勤して行った。

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