ワインとチーズとバレエと教授


誠一郎は、津川理緒の電話帳並の病歴が書かれたカルテをパラパラ見た。そして、誠一郎は途中で、手が止まった。文章を読む目も思考も止まった。

今まで、たくさん虐待を受けて精神科に来た患者は診てきた。うつ病も、発達障害も、PTSDも摂食障害も、適応障害も、アルコール依存症も、双極性障害も統合失調症も、見飽きるほど診てきた。

だから、患者の不幸な生活には、ある程度、免疫がある。それでも…津川理緒のおぞましいまでの虐待の経緯が、誠一郎の思考を停止させた。


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