ワインとチーズとバレエと教授
【交差する三人】バレエとトゥシューズ
長崎で理緒は、亮二と
原爆ドームも訪れた。
社会科の教科書には、第二次世界大戦に、広島と長崎に原爆が落とされ、日本は敗戦したと書いてあった。「そのあと、アメリカのGHQが…」と、
詳しい歴史は亮二が説明してくた。社会科の先生より説明が上手だと感じた。
「亮二さんは、歴史に詳しいんですね」
理緒が感心して言うと
「…いや…一応、国立の医学部、受験しているから…」と、ちょっと照れながら亮二が言った。
そのあと、お昼は「卓袱料理」(しっぽくりょうり)を食べた。
円形のテーブルに、次々と豪華な料理が運ばれてきた。
料理の皿は、赤が基調になっている、派手な器だった。
「有田焼と言うんだよ」と卓袱料理に箸をつけながら亮二が説明をしてくれた。
「これが?」
「九州では有田焼が有名なんだ」
理緒は亮二の知識におどろいた。
理緒は長崎から帰宅したあと、
器について調べ始めた。
すると亮二が「世界の陶器」という本を渡してきた。
「興味があるなら読んでみるといい」
理緒はその本を受け取った。
そこには、世界の陶器が
たくさん紹介されていた。
フランスはリモージ焼きが有名らしく、
有田焼も紹介されていた。
鎌倉は備前焼、セトモノと言うけど瀬戸焼が本来の名前らしい。
理緒は器を覚えだし、その器に合った、料理を作ろうと思った。
もともと、料理が好きだったこともあり、
亮二には、たくさん、ご馳走になってばかりだ。
今、自分は何もしてないのだから、少しは亮二の役に立ちたいと理緒は思った。
理緒はリモージュ焼の器を亮二の了解を取ってネットで購入し、
「初めてのフランス料理」
という本をアマゾンの中古で買い、料理を本格的にやりだした。
どうやら、日本のダシに当たるのが
フランスでは、フォンドボーと言うらしい。
玉ねぎやセロリやニンジンや肉などを
長時間煮込み、そのスープが、フォンドボーになり、そこからデミグラスソースや、ベシャメルソース、オーロラソースなどに変化させるらしい。
ちなみに、ラーメンのスープとして使っても良いと
書かれてあった。
理緒は食材を買い込み、さっそく本格的な料理を作り出した。
ある日、亮二が帰宅すると
テーブルコーディネートされた
食卓テーブルが目に入った。
ナイフとフォークとスプーン等の
カトラリーが置かれ、テーブルナプキンまで設置されていており、亮二は驚いた。
「えっと…今日は何の日だっけ?」
驚いて聞く亮二に
「お口に合うか分かりませんが作ってみました…」
そう言って、亮二を椅子に座るよう促し、
理緒が冷蔵庫に入れておいた
ヒラメのカルパッチョを出した。
「理緒ちゃんが作ったの?」
「はい、ソースはレモンの酸味が
少しだけあり、バルサミコも使ってます」
「バルサミコ…そこまで…?」
冷えた皿に、ヒラメのカルパッチョ…
「カルパッチョは
イタリアン料理ですが
ソースはフレンチです…」
理緒が言い訳をするかのように、照れながら言った。
「えっと…では頂きます…」
亮二はパクっと一口食べると
「…美味しい…」
と呟いた。
理緒がホッとしたのか、次は、ほうれん草のキッシュを出した。
次はオマール海老のビスクスープ。
オマール海老の殻をフードプロセッサーで粉砕して
フォンドボーと生クリームで煮込んだらしい。
次はお口直しのミントのシャーベット。
次はフォアグラのオレンジソース。
カシスも使ったようだ。
最後は子羊のオーブン焼き。
ソースが完璧にフレンチだった。
デザートはメロンと
最後にマカロンが出てきた。
「これは…本気で、すごい…」
社宅がフランス料理店になった。
「あぁ、良かった…自分でも出来るかどうか
不安だったの!」理緒はそう言うとホッとした様に微笑んだ。
「理緒ちゃんは、料理の才能があるの?
将来はシェフになりたいの?」
亮二は本気で聞いた。
器まで覚え、ネットでオマール海老と
ファアグラまで取り寄せ、ここまで本格的に作ったのだから、何かを目指しているのだろうと亮二は思ったが、
「え?シェフ…?
いえ、そんな、だいそれた事は
望んでいなくて、ただ…亮二さんが
喜んでくれるならと…」
理緒はもじもじしながら言った。
「オレのためだけにここまで…?」
それだけのために
ここまで頑張ったのか…そう思うと亮二はなんだか感動した。
「あの、お金をかけてしまって
すみません…」理緒が申し訳なさそうに言った。
「いや、いいんだ、理緒ちゃんは
他にやりたいことはある?」
亮二は真剣に聞いた。
「えっと…そうですね…
料理をもっと勉強したいのと…」
「それから?」
「体力がないのでクラシックバレエを、
習いたいです…前にフィギュアスケートを
やっていたものですから…
近くにリンクはないので、それで、お店で買い物をしている最中、バレエ教室のチラシを見つけまして…」
そのチラシには
「生徒募集、初心者から大人まで
気軽にバレエレッスンを
してみませんか?
月謝
週一回、月4回で
6000円」
と書いてある。
理緒が、もじもじして、亮二の返事を待っていた。
「いいじゃないか!理緒ちゃんがやりたいなら
やったらいいよ!オレは応援する!」
亮二は、何かに積極的になってきた
理緒を、本当に嬉しく思った。
「いいの…?」
「当たり前じゃないか!一応、父親だし、
娘のやりたいことをやらせるのが普通だろ?」
亮二は微笑んだ。
理緒が生半可な気持ちで
やるとは思えなかった。
料理にせよ、器にせよ、理緒は自分で学んでいる。
原爆ドームを見たあとすぐ、「永遠の0」を読み出し、第二次世界大戦を学び直していた。
しょせん、小説だが一日で読み終え
その後は、「夜と霧」を読み出し、次はドフトエフスキーの「白痴」を完読した。
きっと、何をするにも勇気がいるだろうが、
理緒がやりたいと思うことは、何でもやらせようと亮二は思った。
多分、すごい伸びる子だー
亮二はそう確信した。
今まで、環境が最悪だっただけだ。
キチンと教育すれば、いくらでも伸びしろがある子だと亮二は確信した。
「じゃあ、バレエを
習ってもいいですか?」
理緒は確認した。
「もちろんだよ!」
理緒の顔が、ぱぁと明るくなった。
理緒には、きっと素晴しい才能がある、亮二はそう確信した。その時はー
原爆ドームも訪れた。
社会科の教科書には、第二次世界大戦に、広島と長崎に原爆が落とされ、日本は敗戦したと書いてあった。「そのあと、アメリカのGHQが…」と、
詳しい歴史は亮二が説明してくた。社会科の先生より説明が上手だと感じた。
「亮二さんは、歴史に詳しいんですね」
理緒が感心して言うと
「…いや…一応、国立の医学部、受験しているから…」と、ちょっと照れながら亮二が言った。
そのあと、お昼は「卓袱料理」(しっぽくりょうり)を食べた。
円形のテーブルに、次々と豪華な料理が運ばれてきた。
料理の皿は、赤が基調になっている、派手な器だった。
「有田焼と言うんだよ」と卓袱料理に箸をつけながら亮二が説明をしてくれた。
「これが?」
「九州では有田焼が有名なんだ」
理緒は亮二の知識におどろいた。
理緒は長崎から帰宅したあと、
器について調べ始めた。
すると亮二が「世界の陶器」という本を渡してきた。
「興味があるなら読んでみるといい」
理緒はその本を受け取った。
そこには、世界の陶器が
たくさん紹介されていた。
フランスはリモージ焼きが有名らしく、
有田焼も紹介されていた。
鎌倉は備前焼、セトモノと言うけど瀬戸焼が本来の名前らしい。
理緒は器を覚えだし、その器に合った、料理を作ろうと思った。
もともと、料理が好きだったこともあり、
亮二には、たくさん、ご馳走になってばかりだ。
今、自分は何もしてないのだから、少しは亮二の役に立ちたいと理緒は思った。
理緒はリモージュ焼の器を亮二の了解を取ってネットで購入し、
「初めてのフランス料理」
という本をアマゾンの中古で買い、料理を本格的にやりだした。
どうやら、日本のダシに当たるのが
フランスでは、フォンドボーと言うらしい。
玉ねぎやセロリやニンジンや肉などを
長時間煮込み、そのスープが、フォンドボーになり、そこからデミグラスソースや、ベシャメルソース、オーロラソースなどに変化させるらしい。
ちなみに、ラーメンのスープとして使っても良いと
書かれてあった。
理緒は食材を買い込み、さっそく本格的な料理を作り出した。
ある日、亮二が帰宅すると
テーブルコーディネートされた
食卓テーブルが目に入った。
ナイフとフォークとスプーン等の
カトラリーが置かれ、テーブルナプキンまで設置されていており、亮二は驚いた。
「えっと…今日は何の日だっけ?」
驚いて聞く亮二に
「お口に合うか分かりませんが作ってみました…」
そう言って、亮二を椅子に座るよう促し、
理緒が冷蔵庫に入れておいた
ヒラメのカルパッチョを出した。
「理緒ちゃんが作ったの?」
「はい、ソースはレモンの酸味が
少しだけあり、バルサミコも使ってます」
「バルサミコ…そこまで…?」
冷えた皿に、ヒラメのカルパッチョ…
「カルパッチョは
イタリアン料理ですが
ソースはフレンチです…」
理緒が言い訳をするかのように、照れながら言った。
「えっと…では頂きます…」
亮二はパクっと一口食べると
「…美味しい…」
と呟いた。
理緒がホッとしたのか、次は、ほうれん草のキッシュを出した。
次はオマール海老のビスクスープ。
オマール海老の殻をフードプロセッサーで粉砕して
フォンドボーと生クリームで煮込んだらしい。
次はお口直しのミントのシャーベット。
次はフォアグラのオレンジソース。
カシスも使ったようだ。
最後は子羊のオーブン焼き。
ソースが完璧にフレンチだった。
デザートはメロンと
最後にマカロンが出てきた。
「これは…本気で、すごい…」
社宅がフランス料理店になった。
「あぁ、良かった…自分でも出来るかどうか
不安だったの!」理緒はそう言うとホッとした様に微笑んだ。
「理緒ちゃんは、料理の才能があるの?
将来はシェフになりたいの?」
亮二は本気で聞いた。
器まで覚え、ネットでオマール海老と
ファアグラまで取り寄せ、ここまで本格的に作ったのだから、何かを目指しているのだろうと亮二は思ったが、
「え?シェフ…?
いえ、そんな、だいそれた事は
望んでいなくて、ただ…亮二さんが
喜んでくれるならと…」
理緒はもじもじしながら言った。
「オレのためだけにここまで…?」
それだけのために
ここまで頑張ったのか…そう思うと亮二はなんだか感動した。
「あの、お金をかけてしまって
すみません…」理緒が申し訳なさそうに言った。
「いや、いいんだ、理緒ちゃんは
他にやりたいことはある?」
亮二は真剣に聞いた。
「えっと…そうですね…
料理をもっと勉強したいのと…」
「それから?」
「体力がないのでクラシックバレエを、
習いたいです…前にフィギュアスケートを
やっていたものですから…
近くにリンクはないので、それで、お店で買い物をしている最中、バレエ教室のチラシを見つけまして…」
そのチラシには
「生徒募集、初心者から大人まで
気軽にバレエレッスンを
してみませんか?
月謝
週一回、月4回で
6000円」
と書いてある。
理緒が、もじもじして、亮二の返事を待っていた。
「いいじゃないか!理緒ちゃんがやりたいなら
やったらいいよ!オレは応援する!」
亮二は、何かに積極的になってきた
理緒を、本当に嬉しく思った。
「いいの…?」
「当たり前じゃないか!一応、父親だし、
娘のやりたいことをやらせるのが普通だろ?」
亮二は微笑んだ。
理緒が生半可な気持ちで
やるとは思えなかった。
料理にせよ、器にせよ、理緒は自分で学んでいる。
原爆ドームを見たあとすぐ、「永遠の0」を読み出し、第二次世界大戦を学び直していた。
しょせん、小説だが一日で読み終え
その後は、「夜と霧」を読み出し、次はドフトエフスキーの「白痴」を完読した。
きっと、何をするにも勇気がいるだろうが、
理緒がやりたいと思うことは、何でもやらせようと亮二は思った。
多分、すごい伸びる子だー
亮二はそう確信した。
今まで、環境が最悪だっただけだ。
キチンと教育すれば、いくらでも伸びしろがある子だと亮二は確信した。
「じゃあ、バレエを
習ってもいいですか?」
理緒は確認した。
「もちろんだよ!」
理緒の顔が、ぱぁと明るくなった。
理緒には、きっと素晴しい才能がある、亮二はそう確信した。その時はー