ワインとチーズとバレエと教授
【交差する三人】バレリーナの残酷な現実
2019年ー
理緒がバレエを始めて
2年経つ頃だった。
高杉による90分のスパルタ指導を終え、
クタクタになっている理緒のところへ
高杉がやってきた。
「バレエシューズを脱いで
裸足になってください」
理緒は言われるままにそうした。
「5本の指先で一分間、立ってくだい。
ルルベではなく指先です、
バーには右手の小指一ミリだけ
置いていいです」
理緒が言われた通り
5本の指先で全体重を乗せた。
痛いー
でも、痛いとは言わない。
「バーの小指も
離してください」
「えっ…」
耐えられるか自信がない。
それでも理緒は残りの30秒を
5本の指先で立ち続けた。
「よろしい」
高杉の声で、
ようやく床に足をつけた。