ワインとチーズとバレエと教授
翌日、ミルバに行き、
トウシューズが
脱げてしまうことを
丁寧に店員が聞き取り
やはり、グリシコを勧められた。
そして、またリボンを縫い
トーシューズをトンカチで叩き、
ドライヤーで柔らかくして、
椅子の背もたれでしならせ、
パットを履いて、ようやく、しっくりきたようだ。
家の中で、軽くピルエットしたが
今度は脱げなかった。
大丈夫そうだ、次のレッスンは順調に
ポアントが出来る。
ただポアントは、非常に難易度が高く
バレエシューズと違って身動きが取りにくい。
アラベスクでさえ出来なくなっている。
案の定、スタジオでは
「もっと足を力強く!
足を緩めないで!
何やってるの!
もっと強い足で!」
そして、また高杉に顔を
平手で叩かれた。
それでも負けない。
それでも泣かない。
絶対に上手くなってみせる。
理緒はそう思った。