ワインとチーズとバレエと教授


翌日、ミルバに行き、
トウシューズが
脱げてしまうことを
丁寧に店員が聞き取り
やはり、グリシコを勧められた。

そして、またリボンを縫い
トーシューズをトンカチで叩き、
ドライヤーで柔らかくして、
椅子の背もたれでしならせ、
パットを履いて、ようやく、しっくりきたようだ。

家の中で、軽くピルエットしたが
今度は脱げなかった。

大丈夫そうだ、次のレッスンは順調に
ポアントが出来る。

ただポアントは、非常に難易度が高く
バレエシューズと違って身動きが取りにくい。

アラベスクでさえ出来なくなっている。
案の定、スタジオでは

「もっと足を力強く!
足を緩めないで!
何やってるの!
もっと強い足で!」

そして、また高杉に顔を
平手で叩かれた。

それでも負けない。

それでも泣かない。

絶対に上手くなってみせる。

理緒はそう思った。

< 73 / 302 >

この作品をシェア

pagetop