ワインとチーズとバレエと教授
「あなたは、前回もバレエのやり過ぎで、
中足疲労骨折になりましたね?
今回もピアノのやり過ぎで、
同じような事が起こっているように
思いますが、いかかですか?」
嫌味な言い方だと、誠一郎も自覚している。
それでも、あえて言った。
それでも、理緒はうつむいたまま
無言を貫いた。
「きっと、あなたは、
立ち止まると困ることが
あるのでしょうね」
そう言うと理緒が
ほんの少しピクンと反応した。
「あなたが、手帳を真っ黒にして
休まず、ハードにケガをするまで
忙しく自分を追いつめなくては
ならない、理由は何ですか?」
理緒は何も言わない。
「では、私があなたを
今日まで考察して、感じたことをお伝えします」
理緒はきっと、今にも
逃げ出したい気分だろうと誠一郎は思った。