ワインとチーズとバレエと教授
10分も経たないうちに、
ストレッチャーに乗せられ
胸を苦しそうに抑えている理緒が運ばれてきた。
スーツ姿である理緒は、額から汗が流れ落ち、息も絶え絶えだ。
顔も痛みでゆがみ、くちびるを噛み締めて、目をつぶっていた。
「津川さん、大丈夫ですか?
どこが痛いですか?」
と誠一郎が聞くと、理緒が胸の辺りに手に置いた。
「津川さん、異型狭心症の発作だと思いますので、
循環器内科の先生に診てもらいましょう」
誠一郎はすぐに循環器内科に連絡を取り、
理緒が受け入れられ、処置をすると連絡があった。
理緒はすぐ点滴を入れられ、発作はしばらくすると
落ち着いたと担当医から内線が来た。
どうやら、担当医の話によると
仕事のやり過ぎによるストレスと、
睡眠不足もあることか分かった。
誠一郎は、発作が治まり
ある程度、落ち着いたら、
精神科外来に理緒を
呼んでもらうよう
担当医に頼んだ。
誠一郎は、ひとまず
ホッとしたが、理緒は精神的には
悪化したのだと確信した。
1時間後、理緒は
何事もなかったかのように
精神科外来を訪れた。
誠一郎は、待合室の椅子に
腰かけている理緒を呼び出した。
理緒は、診察室に入ってくると
いつも通り礼儀正しく頭を下げ、
何事もなかったかのように
「失礼します」と
丁寧にお辞儀をした。
誠一郎は理緒に
パイプ椅子に座るよう促した。