ワインとチーズとバレエと教授
理緒は誠一郎の診察の後、病院からまっすぐ
自宅には帰らず、高杉バレエ教室を訪れた。
ここを訪れるのは3年ぶりだった。
高杉に
「もうここに来なくてよろしい」
と言われてから
セントラルバレエ教室に移動した。
それから1度も
高杉とは会っていない。
どんな顔で会ったらいいのか考えたが、分からない。追い返される事も予想したが、それでもでも高杉に、どうしても聞きたいことがあった。
久しぶりの高杉バレエ教室は
懐かしさと、どこか張りつめた緊張感を感じた。
スタジオを外から眺めると
子供達がレッスンを受けている。
「だから、ススしてアンオー!」
だから、アンディオールしなさい!
何度も同じこと言わせないの!」
相変わらず、高杉は
子供にもスパルタ指導でバレエを教えていた。
高杉は、大人も子供も容赦しない。
レッスンが終わり、子供たちが
「ありがとうございました」と
高杉にレヴェランスをしたとき、
理緒はスタジオの外から
高杉に目線を合わせ会釈した。
高杉は驚いた顔をしたが
初めて理緒に笑いかけた。
そしてジェスチャーで
「入っておいで」と手招きされた。