親友に夫を奪われました
2 サイラは親友なの?
「サイラさん。ここを使いなさいよ。ずっと空き部屋になっていたのよ。ちょうど良かったわ」
姑が案内したのは私達夫婦の寝室の隣だ。そこは子供部屋として準備していた部屋で、私が幼い頃のワンピースなども大切に保管している場所でもあった。サイラは部屋をキョロキョロと見回し備え付けの引き出しを見つけると、私に聞くまでもなく中を確認する。そして、そこに詰まった服を見て満面の笑みを浮かべた。
「可愛いワンピースがいっぱいだわね。ティアにぴったりのサイズもあるわ。ロレーヌ、貸してくれるでしょう?」
「それは私の母さんの手作りのワンピースだから悪いけど貸せないわ。思い出がたくさん詰まった大切なものなの。私が娘を産んだ時に着せてあげたいのよ」
「酷い。意地悪なのね。私はアロイスが怖くてもう家には戻れないのよ。ティアの服だって今着ているものしかないわ。一枚ぐらいちょうだいよ」
さっきまで『貸して』と言っていたはずが、今は『ちょうだい』になっていた。ピンクの瞳に涙を浮かべて恨みがましく私を見る。ティアはサイラの長女の名前で、ちなみに2歳の次女はエルネという。
「ロレーヌ。自分が子供を産めないからって、サイラさんに嫉妬するのは見苦しいですよ。減るものじゃないし快く貸してあげなさい。こんなもの、古い流行遅れのワンピースじゃないの」
「ロレーヌ、君の狭い心を残念に思うよ。困っている人を助けてあげようという気持ちはないのかい?」
姑とガブリエルは私を責め、サイラはそれを黙って見ていた。その瞳は少しこの状況を楽しんでいるかのように輝いている。サイラは何を考えているのだろう。私達は親友じゃないの?
食事はいつも私が家族の人数分を用意することになっていた。今日のディナーはサイラが増えたのでメインディッシュが足りない。ステーキ肉はちょうど人数分しか買っていないし、付け合わせの野菜もそれほど多くはなかった。それに4歳の子供がなにを食べるのかもわからない。
とりあえず四人分の肉を焼いて切り分け、五枚のお皿に盛り付けようとしたら、姑が思いがけないことを言った。
「あら、四人分の肉を五人で分けるなんて貧乏くさい。サイラさんはお客様なのよ? お客様にそんなみっともないことをしないでちょうだい。お昼に食べたサンドイッチがまだ残っていたでしょう? あれをあなたが食べれば良いわ」
「良いんですよ。急に押しかけてきた私が悪いんですから、お昼の残飯を私が食べるのは当たり前です」
サイラは姑にそう言いながら、サンドイッチをティアと分け合い食べようとした。
途端に居心地の悪さを感じる。まるで私がとても意地悪な人間になった気がした。姑は私を睨み付けているし、ガブリエルは同情の眼差しでサイラを見つめている。舅は相変わらず空気で、黙々と自分のお皿からステーキを食べていた。
「サイラ、待って。サンドイッチは私が食べるから私のお皿のお肉を食べてちょうだい。ティアにはオムレツでも作るからちょっと待っていて」
「あたち、ハンバーグがいいな。オムレツはあさにたべたもん」
「そうよねぇーー。朝は卵を食べたんだったわね? 覚えていて偉いわね!」
サイラが顔をほころばせながら、ティアの頭を優しく撫でた。
「あぁ、そういえば挽肉があったわね? 今から作ってあげなさいよ。ハンバーグなんて簡単だものね。ティアちゃん、このおばちゃんが今すぐに作ってくれますからね。大人しく待っていましょうね」
姑もティアの頭を撫で上機嫌だった。
「ありがとう、ロレーヌ。流石に親友よね。ティアはね、ハンバーグの上にチーズがのっているのが大好物なのよ」
サイラは私のステーキを迷いもなく口に入れると、可愛らしい笑顔を私に向けた。
姑が案内したのは私達夫婦の寝室の隣だ。そこは子供部屋として準備していた部屋で、私が幼い頃のワンピースなども大切に保管している場所でもあった。サイラは部屋をキョロキョロと見回し備え付けの引き出しを見つけると、私に聞くまでもなく中を確認する。そして、そこに詰まった服を見て満面の笑みを浮かべた。
「可愛いワンピースがいっぱいだわね。ティアにぴったりのサイズもあるわ。ロレーヌ、貸してくれるでしょう?」
「それは私の母さんの手作りのワンピースだから悪いけど貸せないわ。思い出がたくさん詰まった大切なものなの。私が娘を産んだ時に着せてあげたいのよ」
「酷い。意地悪なのね。私はアロイスが怖くてもう家には戻れないのよ。ティアの服だって今着ているものしかないわ。一枚ぐらいちょうだいよ」
さっきまで『貸して』と言っていたはずが、今は『ちょうだい』になっていた。ピンクの瞳に涙を浮かべて恨みがましく私を見る。ティアはサイラの長女の名前で、ちなみに2歳の次女はエルネという。
「ロレーヌ。自分が子供を産めないからって、サイラさんに嫉妬するのは見苦しいですよ。減るものじゃないし快く貸してあげなさい。こんなもの、古い流行遅れのワンピースじゃないの」
「ロレーヌ、君の狭い心を残念に思うよ。困っている人を助けてあげようという気持ちはないのかい?」
姑とガブリエルは私を責め、サイラはそれを黙って見ていた。その瞳は少しこの状況を楽しんでいるかのように輝いている。サイラは何を考えているのだろう。私達は親友じゃないの?
食事はいつも私が家族の人数分を用意することになっていた。今日のディナーはサイラが増えたのでメインディッシュが足りない。ステーキ肉はちょうど人数分しか買っていないし、付け合わせの野菜もそれほど多くはなかった。それに4歳の子供がなにを食べるのかもわからない。
とりあえず四人分の肉を焼いて切り分け、五枚のお皿に盛り付けようとしたら、姑が思いがけないことを言った。
「あら、四人分の肉を五人で分けるなんて貧乏くさい。サイラさんはお客様なのよ? お客様にそんなみっともないことをしないでちょうだい。お昼に食べたサンドイッチがまだ残っていたでしょう? あれをあなたが食べれば良いわ」
「良いんですよ。急に押しかけてきた私が悪いんですから、お昼の残飯を私が食べるのは当たり前です」
サイラは姑にそう言いながら、サンドイッチをティアと分け合い食べようとした。
途端に居心地の悪さを感じる。まるで私がとても意地悪な人間になった気がした。姑は私を睨み付けているし、ガブリエルは同情の眼差しでサイラを見つめている。舅は相変わらず空気で、黙々と自分のお皿からステーキを食べていた。
「サイラ、待って。サンドイッチは私が食べるから私のお皿のお肉を食べてちょうだい。ティアにはオムレツでも作るからちょっと待っていて」
「あたち、ハンバーグがいいな。オムレツはあさにたべたもん」
「そうよねぇーー。朝は卵を食べたんだったわね? 覚えていて偉いわね!」
サイラが顔をほころばせながら、ティアの頭を優しく撫でた。
「あぁ、そういえば挽肉があったわね? 今から作ってあげなさいよ。ハンバーグなんて簡単だものね。ティアちゃん、このおばちゃんが今すぐに作ってくれますからね。大人しく待っていましょうね」
姑もティアの頭を撫で上機嫌だった。
「ありがとう、ロレーヌ。流石に親友よね。ティアはね、ハンバーグの上にチーズがのっているのが大好物なのよ」
サイラは私のステーキを迷いもなく口に入れると、可愛らしい笑顔を私に向けた。