親友に夫を奪われました
5 思いがけない告白
アロイス先輩に寄ればずっと私に好意を持っていたけれど、避けられていたから告白する勇気がでなかったらしい。こちらとしては、サイラに追い払われていただけで、避けていたわけではないのだけれど。
「『うまく仲を取りもってあげるから任せて』と言われてね。直接告白しようとすると、『ロレーヌは男性恐怖症だから告白しても怖がるだけよ』と言われたよ」
「男性恐怖症なわけないじゃないですか? 私は普通にアロイス先輩とお話をしていましたよね? アロイス先輩こそサイラに恋をしていたのでは? 恥ずかしがり屋だから、私をついでに誘っていたのですよね? サイラがそう言っていました」
「逆なんだが。ついでに誘っていたのはサイラの方だよ。君達はいつも一緒にいたし、サイラが付いて来たがったからね。でも、必ず本命のロレーヌが途中で帰ってしまうので、結局わたしとサイラがいる時間が増えた」
過去の誤解が解けると、私達は顔を見合わせて赤くなった。
「わたしは今でもロレーヌが好きだよ」
いきなり言われて心臓が跳ね上がる。
(以前も素敵だったけれど、鍛えた身体のアロイス先輩は優しく綺麗な顔立ちのうえに精悍さも加わって、さらに魅力的な男性になっていた。・・・・・・でも、二児の父親なのよね・・・・・・)
「時間が巻き戻って学園時代に戻れたら良いのに。今では時が経ちすぎてお互いの立場が違いすぎます」
「月日はまだ4年半しか経っていないよ。わたしはまだロレーヌを忘れられないんだ」
「お気持ちは嬉しいのですが、ティア達の父親ですよね? 子供達に対する責任があるでしょう?」
「実はわたしとサイラは夫婦だけど夫婦じゃないんだ。それにあの子達はわたしの子供じゃないよ」
「は? 意味がわかりません」
「サイラが自分の妊娠に気づいた時だった。学園を卒業してすぐの頃さ。結婚できない男性の子供を宿して死にたいと泣きついて来たんだ。わたしはサイラの夫になればロレーヌと一生関わっていけると思ったんだ。君達は親友だったからね。わたしはサイラを利用したんだよ」
私はアロイス先輩の話をそこまで聞いて首を傾げた。人が良いにもほどがあると思ったからだ。
「アロイス先輩がサイラを利用したんじゃなくて、サイラがアロイス先輩を利用したんですよ」
サイラはアロイス先輩の人の良さにつけ込んで、他の男性の子供を身籠もっているのにも関わらず、結婚してもらったのか・・・・・・呆れてしまう。
しかもそれだけの恩があるのに、最近ではアロイス先輩が子供を躾けようとするのを嫌がり、文句を言いだす始末。さらに、アロイス先輩の部下が、偶然サイラとガブリエルが一緒に町を歩いているところを見かけ、後をつけたらしい。まるで新婚夫婦のようにイチャイチャしながら手を繋ぎ、キスをしながら歩いていたという。
(悪い事はできないものね。必ず、こうしてバレていくのよ)
「でも、ガブリエルとのデートの時に子供はどうしていたのかしら?」
「ナニーをたまに雇っていたんだ。いったい、いつから彼と付き合っていたのだろうなぁ。エルネはガブリエル君の子供かもしれない。わたしはサイラとはそういう行為はしていないからね」
私はサイラに心底呆れ、親友だと思っていたぶん尚更腹が立った。
「アロイス先輩、すぐにサイラと離婚しましょう。もちろん、私も離婚します。サイラとガブリエルはお似合いだと思いますわ」
「で、君はどうするんだい?」
「そうですね。実家には兄夫婦が両親と住んでいます。ですから、どこかにアパートを探して・・・・・・」
「だったらアパート探しを手伝わせてほしい。それからお互いがきっちりと離婚したら、わたしのことを真剣に考えてくれないだろうか? 最初は友人としてでも構わない。ちょっとづつで良いんだ」
「ふふっ。学園時代のように『初めまして』から始めましょうか?」
「そうだね。きっとわたし達には明るい未来がある」
整った顔立ちなのに冷たい印象は全くない。優しくて理知的な眼差しは、メガネをかけていても損なわれず、かえってその美貌を引き立てていた。
(私ってちょろいな。さっきまでは不幸のどん底だった気がしたのに、今は学生時代に戻ったようにウキウキしている)
「ちょっとだけ待っていてくれるかな? 一緒に不動産屋に行こうよ。ロレーヌが安全な部屋を見つけられるように一緒に行くから」
本当は自分の屋敷に住まわせたいけれど、と言いながら残念そうにため息をつくアロイス先輩が可愛い。優秀で仕事はできるのに、優しすぎて悪い女性にまた利用されそうで心配だ。
(私が守ってあげなきゃ! そうよ、アロイス先輩も私もそろそろ幸せになって良い頃よ)
「私達が離婚したらすぐに一緒に住みましょう。またアロイス先輩がおかしな女に捕まる前に、私が守ってあげます!」
アロイス先輩は、ほんの少しの沈黙の後に、蕩けるような笑顔を見せた。
「お願いします」
大人の色香を漂わせているのに、どこか少年のように、はにかむ表情も見せる。
「こちらこそ、お願いします」
恋は不思議だ。まだお互い既婚者なのに、気持ちは独身の頃にあっという間に戻っている。そう、特に女って切り替えが早いのよ。
(大丈夫、私はこれからまだまだ幸せになれる。頑張れ、私!)
私は手頃なアパートを見つけ、そうして新たな仕事も見つけた。それは・・・・・・
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
※この二人はまだ既婚者ですけれど、応援したくなるような背景があります。既婚者なのにけしからん! と思う方もいるかもしれませんが、これはフィクションです。これくらい夢があっても良いよね? だって、ロレーヌは悲しい結婚生活だったんだもの、って思っていただけると幸いです。
「『うまく仲を取りもってあげるから任せて』と言われてね。直接告白しようとすると、『ロレーヌは男性恐怖症だから告白しても怖がるだけよ』と言われたよ」
「男性恐怖症なわけないじゃないですか? 私は普通にアロイス先輩とお話をしていましたよね? アロイス先輩こそサイラに恋をしていたのでは? 恥ずかしがり屋だから、私をついでに誘っていたのですよね? サイラがそう言っていました」
「逆なんだが。ついでに誘っていたのはサイラの方だよ。君達はいつも一緒にいたし、サイラが付いて来たがったからね。でも、必ず本命のロレーヌが途中で帰ってしまうので、結局わたしとサイラがいる時間が増えた」
過去の誤解が解けると、私達は顔を見合わせて赤くなった。
「わたしは今でもロレーヌが好きだよ」
いきなり言われて心臓が跳ね上がる。
(以前も素敵だったけれど、鍛えた身体のアロイス先輩は優しく綺麗な顔立ちのうえに精悍さも加わって、さらに魅力的な男性になっていた。・・・・・・でも、二児の父親なのよね・・・・・・)
「時間が巻き戻って学園時代に戻れたら良いのに。今では時が経ちすぎてお互いの立場が違いすぎます」
「月日はまだ4年半しか経っていないよ。わたしはまだロレーヌを忘れられないんだ」
「お気持ちは嬉しいのですが、ティア達の父親ですよね? 子供達に対する責任があるでしょう?」
「実はわたしとサイラは夫婦だけど夫婦じゃないんだ。それにあの子達はわたしの子供じゃないよ」
「は? 意味がわかりません」
「サイラが自分の妊娠に気づいた時だった。学園を卒業してすぐの頃さ。結婚できない男性の子供を宿して死にたいと泣きついて来たんだ。わたしはサイラの夫になればロレーヌと一生関わっていけると思ったんだ。君達は親友だったからね。わたしはサイラを利用したんだよ」
私はアロイス先輩の話をそこまで聞いて首を傾げた。人が良いにもほどがあると思ったからだ。
「アロイス先輩がサイラを利用したんじゃなくて、サイラがアロイス先輩を利用したんですよ」
サイラはアロイス先輩の人の良さにつけ込んで、他の男性の子供を身籠もっているのにも関わらず、結婚してもらったのか・・・・・・呆れてしまう。
しかもそれだけの恩があるのに、最近ではアロイス先輩が子供を躾けようとするのを嫌がり、文句を言いだす始末。さらに、アロイス先輩の部下が、偶然サイラとガブリエルが一緒に町を歩いているところを見かけ、後をつけたらしい。まるで新婚夫婦のようにイチャイチャしながら手を繋ぎ、キスをしながら歩いていたという。
(悪い事はできないものね。必ず、こうしてバレていくのよ)
「でも、ガブリエルとのデートの時に子供はどうしていたのかしら?」
「ナニーをたまに雇っていたんだ。いったい、いつから彼と付き合っていたのだろうなぁ。エルネはガブリエル君の子供かもしれない。わたしはサイラとはそういう行為はしていないからね」
私はサイラに心底呆れ、親友だと思っていたぶん尚更腹が立った。
「アロイス先輩、すぐにサイラと離婚しましょう。もちろん、私も離婚します。サイラとガブリエルはお似合いだと思いますわ」
「で、君はどうするんだい?」
「そうですね。実家には兄夫婦が両親と住んでいます。ですから、どこかにアパートを探して・・・・・・」
「だったらアパート探しを手伝わせてほしい。それからお互いがきっちりと離婚したら、わたしのことを真剣に考えてくれないだろうか? 最初は友人としてでも構わない。ちょっとづつで良いんだ」
「ふふっ。学園時代のように『初めまして』から始めましょうか?」
「そうだね。きっとわたし達には明るい未来がある」
整った顔立ちなのに冷たい印象は全くない。優しくて理知的な眼差しは、メガネをかけていても損なわれず、かえってその美貌を引き立てていた。
(私ってちょろいな。さっきまでは不幸のどん底だった気がしたのに、今は学生時代に戻ったようにウキウキしている)
「ちょっとだけ待っていてくれるかな? 一緒に不動産屋に行こうよ。ロレーヌが安全な部屋を見つけられるように一緒に行くから」
本当は自分の屋敷に住まわせたいけれど、と言いながら残念そうにため息をつくアロイス先輩が可愛い。優秀で仕事はできるのに、優しすぎて悪い女性にまた利用されそうで心配だ。
(私が守ってあげなきゃ! そうよ、アロイス先輩も私もそろそろ幸せになって良い頃よ)
「私達が離婚したらすぐに一緒に住みましょう。またアロイス先輩がおかしな女に捕まる前に、私が守ってあげます!」
アロイス先輩は、ほんの少しの沈黙の後に、蕩けるような笑顔を見せた。
「お願いします」
大人の色香を漂わせているのに、どこか少年のように、はにかむ表情も見せる。
「こちらこそ、お願いします」
恋は不思議だ。まだお互い既婚者なのに、気持ちは独身の頃にあっという間に戻っている。そう、特に女って切り替えが早いのよ。
(大丈夫、私はこれからまだまだ幸せになれる。頑張れ、私!)
私は手頃なアパートを見つけ、そうして新たな仕事も見つけた。それは・・・・・・
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※この二人はまだ既婚者ですけれど、応援したくなるような背景があります。既婚者なのにけしからん! と思う方もいるかもしれませんが、これはフィクションです。これくらい夢があっても良いよね? だって、ロレーヌは悲しい結婚生活だったんだもの、って思っていただけると幸いです。