悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~
 それから、僕はアイナに花冠の作り方を教えてもらった。
 自分がもらった気持ちを、彼女にもお返ししたかったのだ。
 アイナに教わりながら花を繋いでいく。
 気がつけば、アイナが作ったそれよりもずっとしっかりしたものが出来上がっていた。

「わあ……! ジークベルト様はやっぱりすごいです」

 アイナはそうはしゃいだ後、僕の頭に乗った花冠を見てしゅんと俯く。

「私の……下手でごめんなさい」
「……アイナ」

 僕はゆっくりと立ち上がり、自分が作ったそれをアイナの頭にのせた。
 座ったままのアイナが僕を見上げる。
 長い金の髪は風に揺られ、空みたいな水色の瞳には僕が映っていた。
 そんな彼女の頭には、白い花で作られた冠がのっていて、なんだか花の妖精と一緒にいるみたいだなあ、なんて思ってしまった。

「……うん、よく似合ってる。これでお揃いだね」
「でも、私のは、きれいにできてなくて……。そうだ、もっと上手に作り直します!」
「アイナ、僕はこれがいいんだ。君が初めて1人で作って、僕にくれた、これがいい」
「ジークベルト様……。私も、ジークベルト様がくれたこれがいいです」

 アイナはちょっと驚いたような顔をしたあと、頭の花冠に触れながらとても嬉しそうに笑った。
 この贈り物と笑顔が、彼女への気持ちを自覚させたのだ。
 アイナのことが好きだと理解してからの行動は早かった。
 

「アイナ」
「はい」
「ジークベルト、って呼んで欲しい。様はなしで」

 互いに花冠を頭にのせた状態のまま、呼び捨てにしてくれと要求した。

「え、えっと……。ジークベルト……様……」

 突然のことにアイナは戸惑っていたけれど、7歳の僕は引かない。

「ジークベルト」
「ジーク……ベルト…………さま」
「『さま』はなしで」

 今思うと、随分ぐいぐいといったものだと思う。

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