悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~
「気に入ってもらえたかな?」

 あなたが選んでくれたお茶はすごく私好みで、美味しいです。
 ……なんてこと、言葉にはできなくて小さく頷いた。

「喜んでもらえてよかった。この前よそのお茶会で飲んだとき、君が好きそうだと思って銘柄を教えてもらったんだ」

 そんな私とは対照的に、ジークベルトは恥ずかしがる様子もなくさらっと言ってみせた。
 私の好みを把握していて、にこやかに婚約者を観察し、小学生の男の子が言わないであろう台詞を平気で放つ。
 これで12歳だっていうんだから、王族って怖い。
 


「それじゃあアイナ、僕はそろそろ失礼するよ。次は明後日、僕の家だったね」
「うん」
「……貸した本が読み終わらなくても、睡眠時間は削らないように」
「はい……」

 数時間ほど滞在し、ジークベルトは馬車に乗って帰って行った。
 彼が言った通り、次は明後日、シュナイフォード家の方で会う予定だ。
 あの蔵書から本が選べると思うと、すごくわくわくする。
 明日はマナーやダンスのレッスンがあるからちょっと気が重いけど、なんとか乗り越えたい。
 色々済ませて身軽な状態で会いにいくから、待っててね。ジークベルト……の家の蔵書たち。
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