悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~
「新刊が入ってる……!」
「ああ、それは一昨日入ったやつだね」

 今は14時ちょっと過ぎ。
 約束通りシュナイフォード家を訪れた私は、挨拶もそこそこに書庫へ向かった。
 一応、ジークベルトが私を連れて行く形になっている。
 婚約者とはいえ、私が勝手にお屋敷をふらふらすると、誰かに迷惑がかかったりもするのだ。



 書庫に着いた私が最初に見に行く棚は決まっている。
 最近になって作られた、新刊コーナーだ。
 新しく入った本を一か所にまとめてもらえて、利用者の私は助かっている。
 書庫から繋がる部屋に読書や勉強に使うスペースもあったりと、学校の図書室っぽさがすごい。
 
 新刊の確認を終えたら、気になる本を手に取り始める。
 シュナイフォード邸に滞在している間になるべく多くの本の内容を確認し、その中から借りて帰るものを選ぶのだ。

「よさそうなのはあったかい?」

 ジークベルトが声をかけてきたから、

「うん。とりあえず、まずはこれとこれ」

 なんて言いながら手に持っていた本を見せると、ジークベルトがそれを受け取った。
 次に選んだ本も見せる。彼が受け取る。私が見せる。彼はまだ受け取る。見せる。のせる。見せる。のせる。
 なんとなくそういう流れができてしまい、どんどん本を積み上げていく。
 ……積みあげた先が、婚約者の手の上だということも忘れて。


「アイナ……。一度どこかに置いてきていいかな……?」
「ご、ごめんなさい……」

 気が付いたときには、ジークベルトは大量の本を抱えて腕をぷるぷるさせていた。
 男性とはいえ、彼はまだ12歳。この時点では、女性の私と腕力も大きく違わないだろう。
 加えて、この人は王族の男子。
 婚約者だとしても、身分は彼の方が上だ。
 ジークベルトがこんなことで私を罪に問うとも思えないけど、立場とか抜きに申し訳ないからもうちょっと気を付けよう。
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