悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~
視界の端で何かが動いている。なんだろう、これ。
本からそちらへ意識を動かすと、動く何かの正体がわかった。ジークベルトの手だ。
アイナ、と私の名前を呼んでもいた。
「ジーク……?」
「あ、気が付いてくれたね。そろそろ帰る時間だから、貸出用の本を選び始めた方がいいと思うよ」
「え、もうそんな時間?」
「うん、2時間近く経ったかな」
「そっか……。集中してるとあっという間だね」
時間ってすぐに過ぎちゃうから困るよね、とジークベルトに笑いかけてみる。
私は座っていて、彼は立っているからこちらが見上げる形だ。
私の言葉と笑顔を受け、ジークベルトは「そうだね……」となんともいえない顔をしていた。
持ち出したい本を選び、それだけを机に置く。
他のものは、シュナイフォード家の使用人に片づけてもらった。
頑張って厳選したけれど、机の上には4冊の本が残っている。
「……ねえ、ジーク。やっぱり3冊までじゃなきゃダメ?」
「うん。他の家の人に貸していいのは3冊までって決まってるんだ」
「図書館みたい……」
「ごめんね、決まりだから。……シュナイフォード家の人ならそんな制限はつかないんだけどね」
「じゃあ、例えば……。クラウス様は何冊でもよかったりするの?」
「……そうなるね」
「いいなあ……」
クラウス様はジークベルトのお父さんの弟の長男……つまりは彼の従兄だ。
シュナイフォード家の人なら貸出数の制限なしって、私としてはすごく羨ましい。
10冊とか一気に借りて行けたら、移動時間やお互いのスケジュールを気にせずひたすら自宅で読み進めるんだけどなあ。
もっと遅くまでシュナイフォード邸にいられればまた違うのだけど、私たちはまだ12歳。
この国の成人年齢は17だから、この世界でも12歳は子供なのだ。
遅くとも夕ご飯の前には解散するよう、両家の親に言いつけられている。
これじゃあ読む時間が足りないと話したら、貸し出しも可能だとジークベルトが教えてくれた。
ただ、貸出数に制限があるとかで、一度に3冊までしか借りることができない。
本からそちらへ意識を動かすと、動く何かの正体がわかった。ジークベルトの手だ。
アイナ、と私の名前を呼んでもいた。
「ジーク……?」
「あ、気が付いてくれたね。そろそろ帰る時間だから、貸出用の本を選び始めた方がいいと思うよ」
「え、もうそんな時間?」
「うん、2時間近く経ったかな」
「そっか……。集中してるとあっという間だね」
時間ってすぐに過ぎちゃうから困るよね、とジークベルトに笑いかけてみる。
私は座っていて、彼は立っているからこちらが見上げる形だ。
私の言葉と笑顔を受け、ジークベルトは「そうだね……」となんともいえない顔をしていた。
持ち出したい本を選び、それだけを机に置く。
他のものは、シュナイフォード家の使用人に片づけてもらった。
頑張って厳選したけれど、机の上には4冊の本が残っている。
「……ねえ、ジーク。やっぱり3冊までじゃなきゃダメ?」
「うん。他の家の人に貸していいのは3冊までって決まってるんだ」
「図書館みたい……」
「ごめんね、決まりだから。……シュナイフォード家の人ならそんな制限はつかないんだけどね」
「じゃあ、例えば……。クラウス様は何冊でもよかったりするの?」
「……そうなるね」
「いいなあ……」
クラウス様はジークベルトのお父さんの弟の長男……つまりは彼の従兄だ。
シュナイフォード家の人なら貸出数の制限なしって、私としてはすごく羨ましい。
10冊とか一気に借りて行けたら、移動時間やお互いのスケジュールを気にせずひたすら自宅で読み進めるんだけどなあ。
もっと遅くまでシュナイフォード邸にいられればまた違うのだけど、私たちはまだ12歳。
この国の成人年齢は17だから、この世界でも12歳は子供なのだ。
遅くとも夕ご飯の前には解散するよう、両家の親に言いつけられている。
これじゃあ読む時間が足りないと話したら、貸し出しも可能だとジークベルトが教えてくれた。
ただ、貸出数に制限があるとかで、一度に3冊までしか借りることができない。