悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~
工房の応接室には、なんとも気まずい空気が流れている。
王族男子が急に乗り込んできたせいだろう。
立場もあるから平静を装ってにこにこしているけど、心の中ではやってしまったと思っている。
数分が経過した頃、ライラと呼ばれた女性がぱっと顔を上げ、コップが出来上がったと話しだす。
「アイナ、コップって?」
「先日、こちらで吹きガラスを体験させていただいたのです。そのときに私が作ったコップのことですね」
「へえ、君が……。完成しているなら、僕も見てみたいな」
「でしたら……。ライラ、今もってきていただけますか?」
ライラが立ち上がり、応接室を出た。
僕らと使用人だけが残された空間で、アイナが軽くため息をつく。気疲れさせてしまったみたいだ。
僕が無理を言ったせいでこうなったのだから、そこは申し訳なく思う。
でも、僕に対してあの喋り方。
工房に来たときはライラを「ライラおばさま」と呼んでいたのに、今は呼び捨てにしている。
普段の姿を考えると、正直、ちょっと面白い。
「……ジークベルト様?」
「くくっ……。ごめ……。ふふっ……。外行き用の姿に切り替えたのが……面白くて……」
アイナも一応は公爵家のご令嬢。
いつでもどこでも砕けた態度で過ごしているわけじゃない。
時と場合に応じて、口調や振る舞いを切り替えているのだ。
「でも……。今は僕らだけなんだから、いつもみたいに『ジーク』って呼んで欲しいな」
僕がそう言えば、アイナが小さく唇を開いた。ジークって呼んでもらえるかな?
そんな期待をしたとき、応接室にノックの音が響いた。思ったより早い。
入室を許可すると、小さな箱を手にしたライラが姿を見せた。
額にはうっすらと汗もかいている。これは……走ったんだろうな。
そこまでしなくても大丈夫なんだけど、向こうとしては、そうもいかないんだろう。
王族男子が急に乗り込んできたせいだろう。
立場もあるから平静を装ってにこにこしているけど、心の中ではやってしまったと思っている。
数分が経過した頃、ライラと呼ばれた女性がぱっと顔を上げ、コップが出来上がったと話しだす。
「アイナ、コップって?」
「先日、こちらで吹きガラスを体験させていただいたのです。そのときに私が作ったコップのことですね」
「へえ、君が……。完成しているなら、僕も見てみたいな」
「でしたら……。ライラ、今もってきていただけますか?」
ライラが立ち上がり、応接室を出た。
僕らと使用人だけが残された空間で、アイナが軽くため息をつく。気疲れさせてしまったみたいだ。
僕が無理を言ったせいでこうなったのだから、そこは申し訳なく思う。
でも、僕に対してあの喋り方。
工房に来たときはライラを「ライラおばさま」と呼んでいたのに、今は呼び捨てにしている。
普段の姿を考えると、正直、ちょっと面白い。
「……ジークベルト様?」
「くくっ……。ごめ……。ふふっ……。外行き用の姿に切り替えたのが……面白くて……」
アイナも一応は公爵家のご令嬢。
いつでもどこでも砕けた態度で過ごしているわけじゃない。
時と場合に応じて、口調や振る舞いを切り替えているのだ。
「でも……。今は僕らだけなんだから、いつもみたいに『ジーク』って呼んで欲しいな」
僕がそう言えば、アイナが小さく唇を開いた。ジークって呼んでもらえるかな?
そんな期待をしたとき、応接室にノックの音が響いた。思ったより早い。
入室を許可すると、小さな箱を手にしたライラが姿を見せた。
額にはうっすらと汗もかいている。これは……走ったんだろうな。
そこまでしなくても大丈夫なんだけど、向こうとしては、そうもいかないんだろう。