ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「あ!」
「今度は何!」
今までより幾分大きな声を上げた私に、子犬くんの肩がビクッと震え、身構えるような姿勢を取った。
「あなた、私の名字を知っているよね? どうして?」
数十分この人と過ごして、悪い人じゃないというのは伺えたけど、もしかすると私を常々ストーカーしていた変態野郎かもしれない。警戒心は捨てちゃダメだ。
「あー、なんだそのことか」
子犬くんは安心したように肩から力を抜いた。
そしてずずいっと鼻先がくっついてしまうほどに一気に近寄ってきた名前も知らない子犬くん。
「俺の名前は犬飼瑛人、君の高校の一番のモテ男子です」
あ、それ自分で言っちゃうのね。
最初に思ったのはそんなことだった。自信満々にそう言う子犬くん、改め犬飼くんはキラキラとした目で私の返事を待っている。
「…っふ。子犬くんって、本名にも〝犬〟って漢字があるんだね」
「え、え? こ、子犬くん?」
私は素直に思ったことを口にした。
犬飼くんは理解が追いつかないという顔で困惑している。