ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
第三章
変わりゆく心
朝の六時。二泊三日分の荷物をキャリーケースに詰め込み、家を出る。
早朝の涼しい夏の空気が私を柔らかに包み込む。
「……はあ」
今日からのことを考えるだけで口からため息が出てしまう。
犬飼くんとどんな顔をして接したらいいのだろう。
話さないという選択肢もあるけれど、同じ班なのだから当然話さなければならない場面が出てくるだろう。
私は悶々と憂いながら登校した。
教室内はいつもより一層ガヤガヤと騒がしかった。
他の学年はまだ登校していない時間帯だというのに、みんなの顔に眠気はない。
「ゆいおはよ。いよいよだね! それに、あの犬飼くんと一緒の班なんて、最高すぎる。私多分一生分の運使い果たしちゃった」
キラキラとした笑顔を浮かべながら、私のところに来た杏月。
「……うん、よかったね」
それとは対極的に、テンションダダ下がりの私。
杏月はそんな私を不思議そうに見つめ、私を元気付けようと両肩にバシンと手を置いた。
「まあさ、なんとかなるって! 犬飼くんとの一件は色々大変だったろうけど、気にせず話してみ」
杏月にだけは犬飼くんとあったあれこれを話している。
唯一秘密を打ち明けられる親友と呼べる存在がいて、私は本当に恵まれているな……。
「うん、そうしてみる」