ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
杏月からのアドバイスを心の中で唱えて、私は一つ深呼吸した。
各クラスそれぞれ担任の先生に誘導され、大型バスに乗り込んでいく。
杏月とはバスの席が違うから、林間学校が行われる場所に着くまでの間、私は眠ったり読書をしたりして過ごした。
数時間ほどバスに揺られ、無事に富士吉田キャンパスに到着した。
「やっほー!! ようやく着いたぜー!」
東京から山梨まで、約三時間高速バスに乗っていたクラスメイトたちは、次々にバスを降りて伸びをしている。
男子たちはさっそく馬鹿騒ぎをしていて、その中心にいるのはもちろん凛大。
私はそんな光景を見て呆れながら、杏月がバスから降りてくるのを待った。
「あ、ゆい〜。待っててくれたの?」
「うん。みんな並び始めてるから、急いで行こ」
「オッケー」
計百五十人の生徒がクラスごとに並び、クラス委員長が人数の確認をし始めた。
みんな揃っていることが分かれば、次は学年主任の先生がスピーカーを使って話し出す。
「えー、皆さん。今日は急遽決まった林間学校初日です。皆さんが藍津高校に入学して一年が経ちますが、この林間学校を通して今よりもっとクラス同士の交流を深めてほしいと思います。そして……」
始めこそ真剣に聞けていたものの、時間が経つにつれ主任の長々とした話が右から左へ抜けていく。