ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
そこには驚きや好奇の色があった。
レジャーシートの上でゆっくりと降ろされて、私は居た堪れないまま腰を下ろす。
杏月を含め一班のみんなからも驚きの視線を向けられた。
「えっ、と……どういう状況?」
杏月が私と犬飼くんを交互に見て訊く。
「私が転んでるところを、犬飼くんが助けてくれたの」
私がそう言うと、篠原さんが驚いたように目を見開き、口を開いた。
「ビックリなんだけど。犬飼って、そんな優しい奴だったん? いっつも無表情だし、学校イチのモテ男子と言えどあまりの冷淡さでも有名だったのに」
珍しく篠原さんが早口に言葉を並べる。そんな篠原さんに、犬飼くんは複雑そうな表情を浮かべた。
「まあ、困ってる人がいれば助けるのは当然だし……」
犬飼くんはぼそぼそとそう言った。もちろん、私の前での犬飼くんとは真逆の冷淡な口調だ。
「そ」
篠原さんもそんな犬飼くんに無愛想に一言だけ返した。
それと同時に、中央が真っ赤に染まる。
最初は小さく、だけど次第に轟々と燃え盛る炎へと姿を化す。
赤橙色の火花がパチパチと宙に舞い上がる。
私はそんな光景をぼんやりと眺めながら、物思いに耽る。
犬飼くんにおんぶされたこと、きっと学校中に広がるだろうな……。
もしそうなったら、犬飼くんはどうなるんだろう。
学校での犬飼くんと私の家での犬飼くんが全く違う理由。