ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


杏月が私たち二人に大声でそんなことを言う。そんなこと言われたら、ますます元気がなくな……


「やめて、鬱陶しい。まじで逆に元気なくなるから」


私が思ったことと全く同じことを口にした篠原さんに思わず目を向ける。篠原さんに「何」と言われて、私はなんでもないと首を振った。


それから二時間後。朝ご飯を食べ、登山の準備が整った藍津高校二年の一行は登山を始めた。


「はあ、はあ、もう無理、私、」


序盤の序盤というところで息を切らし、先の見えない上り坂に目眩がしてきた私。

そんな私が背負うバッグに、誰かの手が触れた。後ろを振り返って見てみると、そこには私を支えてくれている犬飼くんがいた。


「俺が支えるから、頂上まで頑張ろ」


犬飼くんがはにかんでそう言った。その笑顔を目撃した生徒が、「きゃあっ♡」と黄色い悲鳴を上げる。


犬飼くん、皆の前でも……。

そう思いかけた私は途中で考えるのをやめ、登ることに専念した。


犬飼くんが後ろから押してくれるからさっきより随分と楽になった私は、無事中間地点まで登ることができた。


「滝口くん、汗びっしょりだよ! 大丈夫? 私、こんな時のために汗ふきシート持ってきたからそれで拭こう!」


先に着いていた杏月と滝口くんが何やら近い距離で話している。滝口くんの顔が真っ赤なのは、果たして暑いからなのか恥ずかしいからなのか。

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