ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


二人の恋の予感に勝手にわくわくしている私は、第三者から見たらかなりの変質者だろう。


「雨宮さん、水飲む?」

「はぁっ、はぁ……っうん」


犬飼くんから差し出されたペットボトルを受け取り、蓋を開けごくんごくんと水を喉に流し込む。


「ありがとう、生き返った」


ペットボトルを犬飼くんに返して、口を拭う。何気なく犬飼くんを見ると、犬飼くんも水を飲んでいた。そのペットボトルは、今私が口をつけたものと同じで……


「っえ!?」


これって、もしかして、もしかしなくとも……間接キス、になるよね?


「雨宮サン、どうしたの?」


少しいたずらっぽさを含ませた声でそんなことを訊いてくる犬飼くんは悪魔だ。


「な、なんでもない……!! みんな、早く行くよ!」


顔が真っ赤に染まっていくのが分かり、犬飼くんに素早く背を向けた私は休憩している班員たちに声をかけてずんずんと先を進む。


「おっ、珍しくゆいがやる気出してる! 滝口くん、行こう! 他の皆も!」

「おう! 凛大、行こうぜ」


後ろから杏月や八代くんの声が聞こえてくるけれど、今の私の耳には全く会話の内容が入ってこない。


人生初の間接キスに、感情の収集が追いつけないでいた。

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