ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


俺は初めて知った事実に少しだけ困惑する。


「お兄さんを事故で失って以来、ゆいは一時期ふさぎ込んで、俺とも話してくれなかったんだ……それに前、自分は幸せになってはいけないんだって、訳分かんねえこと言ってたし、」


そこまで聞いて、俺は「ちょっと待って」と二宮の言葉を遮った。


「雨宮さんが、本当にそう言ってたの?」


俺がそう言うと、二宮ははっと我を取り戻したように「しまった」と顔を青ざめた。


「ごめん、今聞いたこと全部忘れて。このこと、誰にも言わないってゆいと約束してたんだった」


二宮は焦ったように俺を見て言った。


「……忘れることはできないけど、でも。誰にも言わないよ」

「あ、ああ。サンキュな。それとさ、ゆいと仲良くなるのは良いけど、ゆいのこと傷つけたりしたらただじゃおかないから」


二宮はまっすぐな目をしてそう言った。俺は複雑な気持ちを抱えたまま、「分かった」と頷いた。

そして二宮は俺を追い越して、友人である八代の所へ駆けて行った。


いつもただキャピキャピしてる奴だと思っていたけれど、あいつもあんな真剣な顔をするんだな……。

あの表情から、二宮がどれだけ雨宮さんのことを想っているのかが分かる。


でも。


二宮には悪いけれど、俺はきっと近い未来、雨宮さんを深く傷つけてしまうことになるだろう───。

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