ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
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「雨宮さん。今日からまた、俺のことをかくまってくれませんか」
夏も終わりを告げようとしていた九月中旬の金曜日の放課後。
大きなキャリーケースを手に、私の住むマンションの前で犬飼くんが深く頭を下げた。
「えっと、これはどういう状況?」
「うーんと、俺が雨宮さんにめちゃくちゃなことを言ってる状況、かな」
「だよね」
私たちは早口で言葉を交わす。
「それで、かくまってほしい理由は?」
今度こそしっかりと理由を訊く。
「……前に俺をぼこぼこにした連中から身を隠すため、です」
犬飼くんから理由を聞いて、私はすぐさま表情を変えた。
ぼこぼこにした連中って、前にあの路地裏にいた人たちのこと……?
「もしかしてその人たちに追われてるの……?」
私は恐る恐る訊ねた。
犬飼くんは暗い表情を浮かべた後、深く頷いた。
「……そっか、それなら早く隠れないと! 私の住んでるマンションにいるところ見られたら終わりでしょ?」
私は犬飼くんの背中を押して、オートロック式のドアを開け犬飼くんと一緒にエレベーターに乗った。
「雨宮さん、あんな突き放し方したのに、またこうやって迷惑かけてごめん……」
俯いたまま、顔を上げようとしない犬飼くんになんて声をかけてあげればいいか迷う。少し考えた後、私は口を開いた。