ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「あのー、ほんっとうに申し訳ないんだけど、今夜だけ俺を家に泊めてくれない?」
言いにくそうに言った彼はぽりぽりと後頭部を掻く。私はぽかーんという表情を浮かべるしかなかった。
「……、無理」
数秒押し黙った私だったけれど、彼の願いを却下した。
それ以前に、初対面の人間の家に泊まろうだなんて、犬飼くんは相当警戒心が薄い。
「……っはあー。だよなあ、無理だよなあ」
犬飼くんは盛大にため息を吐き、がっくりと肩を落とした。それからどかっとソファに座る。
あ、濡れちゃう……。
時すでに遅し。タオルケットも何も巻いていない犬飼くんに乗られたソファにじんわりと雨水が染み込む。
「……」
無表情のまま密かな怒りを抱いた。潔癖症の私にとって、これは耐えられない事態だ。
「……犬飼くん。早く、帰って」
私が一言一句はっきりと口にした、その時。
ゴロゴロゴロ……ッドドォーーーン!!
空を切り裂くような雷が近場で落ちた。
「きゃあっ……!」
私は思わず近くにいた犬飼くんに抱きついてしまう。恥ずかしいなんて感情はなく、ただ雷の音に怯えてしまう。