ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


「逆にゆいは? もう決まってたりするの?」

「実は私も、決まってない」

「え〜、意外。ゆいはしっかり者だからもう決まってるんだと思ってた」


犬飼くんは驚いたように言った。


「……そう見られるだけで、私はそこまでしっかりしてないよ。今も、過去に囚われたまま、」


そこまで言って、私ははっとした。

いらないことを口走ろうとしていた。


そんな私を犬飼くんは不思議そうに見つめている。


「ゆい、どうしたの……?」

「いや、別に。何でもないよ」


それからはなんとなくお互い無言になって、眠くなるまで勉強を続けた。


夜は同じベッドで眠りにつく。

微妙な距離感のまま、私たちは今日も一日を終えた。


 ❥❥❥


「ゆい、起きて。もう朝だよ」


耳元で囁かれて、私はんん、と唸った。


「ゆーいー?」


起きようとしない私に、犬飼くんがさらに大きな声で私の名前を呼ぶ。


「……う、分かったって。起きるよ」


朝は低血圧の私だが観念して低い声でぼそぼそと呟いた。


「ゆい、おはよう」


目をこすって犬飼くんを見ると、そこには朝から眩しいくらいのイケメン美男子がいた。


「まぶし、」


寝ぼけているからなのか、私は思ったことを口に出してしまう。

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