ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


「ん? あ、ごめん。昨日カーテン閉めるの忘れてた」


きっと犬飼くんは、私が言った眩しいという対象を太陽だと思っているんだろう。

私はほっと胸を撫で下ろした。


「ねえゆいっ。今日暇?」


まだ寝ぼけ眼の私に勢いよく顔を近づけてきた犬飼くん。

それは鼻と鼻が触れる距離で、一気に目が覚めた。


「い、犬飼くん、近い……」

「っご、ごめん」


犬飼くんが珍しく動揺している。

いつもなら私をからかってくるくせに。


「それで今日、暇かな?」

「うん、まあ……」

「ほんとっ!? じゃあさ、俺と秋の紅葉見に行こうよ」


朝からテンションの高い犬飼くんに気後れしつつ、〝紅葉〟という言葉に惹かれて、私はいつの間にか頷いていた。


 ❥❥❥


秋の涼しいそよ風に揺られ、カサカサと葉と葉が擦れ合う音が聞こえてくる。


「わ、綺麗……」


赤やオレンジ、黄色の葉が空を覆い尽くすように(しげ)っている。

真っ赤に燃え盛るような赤がずっと先まで続いている。


隣の犬飼くんに目を向けると、目を見開いて硬直していた。


「犬飼くん?」


気になって声を掛けると、犬飼くんは我にかえったように体をビクつかせ、私を見た。


「あ、ごめん。自分の世界に入ってた」


苦笑いして後頭部を掻く犬飼くん。

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