ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


犬飼くんが話すことをどこか遠くで聞きながら、私は悟る。


私、今、犬飼くんと一緒にいることに幸せを感じてるんだ。


そのことに気づいたら、私は身動きが取れなくなった。

そんな私に、あの日の出来事が〝思い出せ〟と言うように蘇ってくる。


お兄ちゃんを守れなかった私が、お兄ちゃんを置いて幸せになっちゃいけない。

お兄ちゃんが今生きていたら、もう立派な大人だっただろう。


コミュニケーションお化けのお兄ちゃんのことだから、泣いて笑って、沢山の人と関わって、幸せに過ごせていたはずだ。


「い……? ゆい? どうしたの、」

「……っあ、ううん。なんでもない。ごめんね、少しぼーっとしてた」


背中につー、と冷や汗が流れるのを感じる。

焦りと自己嫌悪でどうにかなってしまいそうで、私は平静でいることに努めた。


 ❥❥❥


家に帰ってきて、気持ちを落ち着けるために私は自分の部屋にこもった。


頭の中でぐるぐるしていたものを一つずつ整理していく。

その内に眠気に襲われて、私は寝室に行きベッドに横たわった。


次に起きたのは、午後三時頃。

目を覚ますと視界が歪んでいて、訳が分からなくて困惑した。

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