ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
だ、誰か……犬飼くん、
その名を呼ぼうとした時、ガチャリと静かにドアが開く音がした。
霞んだ視界の中、何かを持って近づいてくる犬飼くんが映る。
私の異変に気づいたのか、犬飼くんは慌てたように私の所まで駆け寄ってきた。
「ゆい……!」
犬飼くんは手に持っていたものをベッドの脇にある小さな棚の上に置き、私の肩を抱いた。
私はそのまま背中を委ねてしまう。
ぐったりとした私を犬飼くんが介抱してくれているうちに、ぼやけていた視界がクリアになっていく。
「……犬飼、くん」
どこかに行こうとした犬飼くんの手首を掴んで、彼を引き止める。
「ん?」
犬飼くんは涙が出てきそうになるほど優しい声でそう言って、私を振り返った。
「……行かないで」
こんなこと言うつもりはなかったのに、なぜかそんな言葉が口を衝いて出た。
犬飼くんが目をまん丸くして私を見る。
自分が言ったことのあまりの恥ずかしさを自覚し、私はすぐに訂正しようとした。
だけどその前に犬飼くんが口を押さえてぼそっと呟いた。
「……かわいすぎだろ」
その言葉は私の耳には届かず、犬飼くんが何を言ったのか分からなくて不安になる。
「犬飼くん、今言ったの、嘘だから……っだから、もう行っていいよ」