ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
彼にしがみつく腕に力が入る。
「あ、雨宮さん……?」
頭上で犬飼くんの動揺した声がするけれど、脳内がパニック状態の私は返事する余裕がない。
雷が鳴り続ける間、爪が犬飼くんの背中に食い込むくらい強く強く抱きついていた。
小さい時から、雷は大の苦手だ。全身がぶるぶると震えている私を、犬飼くんは優しく抱きしめ返してくれた。
安心させるように何度も何度も背中を撫でられて、過呼吸になっていた私は徐々に冷静さを取り戻した。
「っはぁ、はぁ……」
「雨宮さん、大丈夫……?」
雷が鳴り止み、ようやく我に返った私を次に襲ったのは羞恥だった。全身を巡っていた血が逆流したように、血液が一気に顔に集まる。
「顔、真っ赤だけどほんと大丈……」
「だ、大丈夫だから! 急に抱きついたりしてごめんなさい……」
犬飼くんの顔を見れない。私はすぐに彼から離れて俯く。
「いや、それは別にいいんだけどさ。雨宮さん、雷苦手だったんだ」
犬飼くんが驚いたように言うから、私のプライドはばらばらと音を立てて崩れていった。