ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「ゆい、これ。口に合うかは分からないけど……」
「……このおかゆ、犬飼くんが作ってくれたの?」
ゆいの綺麗な瞳に見つめられて、俺は緊張気味に頷いた。
「すごい美味しそう……卵がゆ、私好きなんだよね」
弱弱しい笑顔でそう呟くゆいを見ていると、なぜか胸がきゅっと狭くなる。
切なくて、苦しくて、そして甘ったるい何か。
この気持ちの正体が何かを知ってる。
自分がだんだんとゆいのことを好きになっている自覚はあったけれど、今まで必死に隠そうと心の中にそっと閉じ込めていた。
きっと一生開けられることはないだろうその扉が開きそうになるのを、俺は必死に止める。
「ふふ、美味しい。犬飼くん、作ってくれてありがとう」
そんなゆいを直視できなくて、俺は目を逸らして返事をした。
ゆいがおかゆを頬張るのを横目に、俺は暗い気持ちで思う。
……もういい加減、〝あのこと〟を伝えなくちゃ。
いつまでもたもたして、隠し続ける気でいるんだよ。
自分を叱咤する反面、この同居生活が終わってしまうと思うと言い知れない虚無感に襲われる。
それでもここは、私情を押し殺して言わなくちゃいけないことを言うしかないんだ──。