ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
第四章

消せない過去

「いつまでもたもたしてんだ。ぶっ殺すぞ」


ドンッと鈍い音が路地裏に響いて、俺はかはっと唾を吐き出した。

思い切り蹴られたお腹があり得ないくらい痛い。

俺は顔を顰めてこちらへ近づいてくる相手を見上げた。


「早くあの女に自分の正体を打ち明けろ。そんで土下座して謝れ。それが〝アマミヤ〟さんに対するせめてもの償いだろ」


白龍の現トップである冬樹さんの言葉が痛いくらいに胸に刺さる。

八月、高校が夏休みに入った頃。

俺は今でも信じ難い事実に目を背けたくなった。

それはあまりに残酷で、目を逸らしたくなるほどの悲しい現実。


 ❥❥❥


「ゆい、ちょっといい……?」


ソファに座ってくつろいでいたゆいに俺は恐る恐る声をかけた。


「ん、何?」


ゆいと視線が交わる。

俺の心臓はドクンと悪い音を立てた。


「……実はゆいに、伝えなきゃいけないことがあって」


俺はゆいから視線を逸らしてぼそぼそと呟く。

目が虚ろになっているのが自分でも分かる。
< 131 / 150 >

この作品をシェア

pagetop