ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


覚悟を決めたはずなのに、これまで隠してきた秘密を打ち明けることをためらってしまう。


「伝えたいこと?」


ゆいは不思議そうに俺を見つめている。

床に座り、膝の上で拳を握る。

力を入れすぎたのか、握った拳がぶるぶると震えてしまう。


そんな俺の異変に気づいたのか、ゆいは表情を変え心配そうに顔を覗き込んできた。


……っ、言え、言うんだ。

自分を奮い立たせて、俺は顔を上げ口を開く。


「───…っ俺がゆいの兄貴を、殺したんだ」


 ❥❥❥


部屋の空気が一瞬にして凍ったのが分かった。

私は目を見開いて、目の前にいる犬飼くんのことを凝視してしまう。


今、なんて言ったの……?

聞き返すこともできず、私の頭は真っ白になっていく。


「本当に、ごめん……っ」


犬飼くんが床に額をつけて土下座した。

そんな光景に私は戸惑う。


「……っ、い、犬飼くん。顔を上げて、そんなことしなくていいから。どういうことなのか、教えてほしい」


震える声でなんとか言った。

犬飼くんはゆっくりと体を起こした後、苦しそうに顔を歪め、これまで秘密にしてきたことを打ち明け始めた──。

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