ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
だけど、このまま犬飼くんを一人にさせるわけにはいかないと思った。
いつも同じベッドで寝ていた私たちは、今日は別々。
今頃ソファーで寝ているであろう犬飼くんのことを考える。
私のお兄ちゃんは、生前白龍と呼ばれる暴走族の総長を務めていたらしい。
グループにとって一番大切な人をバイクで轢いてしまった犬飼くんのお兄さんは、その責任を犬飼くんに転嫁したそうだ。
……それで今まで犬飼くんは、自分は幸せになっちゃいけないと思っていたんだ。
私と、同じ。
私も、お兄ちゃんが死んでからずっとそう思ってきた。
お兄ちゃんを守れなかった自分が、お兄ちゃんを置いて幸せになっていいはずがない。
小学生の時も中学生の時も特定の友達を作らなかった私。
だけどいつしか耐えられなくなって、私は幸せに手を伸ばした。
高校に入学した時に杏月という友達ができた。
私は自分でも気づかないうちに、幸せを感じていたんだ。
泣き腫らした目を擦って、ぼんやりと天井を眺める。
「……ねえ、お兄ちゃん。私、幸せになってもいいのかな」
消え入りそうな声で呟いた。
その言葉に、返事は返ってこない。
泣き疲れた私は、そのまま温かいベッドの上で眠りに落ちた。