ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


 ❥❥❥


「行ってきます」


誰もいない家に向かってそう言って、私はドアを施錠する。


「あはは、誰に向かって言ってるの」


私の隣にいた犬飼くんが頭の後ろで腕を組んでおかしそうに笑った。


「別に、言ったっていいでしょ」


私は犬飼くんの目の前を通り過ぎてエレベーターの方へ歩いて行く。

二人一緒に乗り込み、肩を並べて通学路を歩いた。


周りからの視線にいたたまれなくなったけれど、私はすぐに考え直す。

今日から、犬飼くんと一緒に楽しい毎日を送るんだ。


最初からというのは難しいかもしれないけれど、犬飼くんにも少しずつ本当の自分を学校で見せてほしいと思う。


二年生の教室がある階に着いて、「俺、教室あっちだから」と言って犬飼くんが私に背を向ける。


私はその背中に向かって心の中で頑張れとエールを送った。

教室に入ると、杏月が真っ先に駆け寄ってきた。


「ゆいっ! 私、見ちゃったよ。犬飼くんと一緒に登校してるとこ!」


興奮気味にそう言う杏月に私は苦笑いを返す。


「はは、見られちゃってたか……」

「私、窓から見てたんだけどさ。犬飼くん、すごい笑顔だったよね!?」


杏月からの鋭い指摘に私は何て返そうか迷う。

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